『東大思考』(西岡壱成 著、東洋経済新報社)の著者は現役の東大生である。
もとから頭がよかったのかというと、そういうわけでもなく、ハッキリ言って「バカ」だったという。
高校3年生の模試の偏差値は35。英語の成績は100点満点中3点。勉強していないからその成績だったわけではなく、毎日勉強机にむかっていての結果だそうだ。
「自分みたいな頭の悪い人間がどうやったら東大に合格できるほど頭がいい人間になれるか?」ということを徹底的に考え抜き、2浪した後東大に合格を果たします。
著者が東大に合格できた理由として、頭のいい人のやり方、思考法をパクりまくったからだといいます。東大生がやっている勉強の方法、読書のテクニック、作文の術を盗み続けたのです。
そのときに著者が感じたのが「頭のいい人は思考回路が違う」ということでした。しかもその思考回路は誰にでも身につけることができる、つまりは誰にでも東大生の頭のよさを手にすることができるというのです。
そんな頭のいい人の思考回路を、本書では多くの東大生に共通している「5つの思考回路」として解説しています。
そして本の後半では地頭のいい人がどんな場面でどのように東大思考を活用しているのか、具体的な実践方法が紹介されています。
今回は「5つの思考回路」の前に書かれていた、そもそも東大生は、なぜ頭がいいのか?他の人とは何が違うのか?という話がとても本質的だったのでこちらに焦点を当ててみたいと思います。
【書評】東大思考/西岡壱成
東大生の頭のよさは日常生活でつくられる
東大生はなぜ「頭がいい」と言われるか考えたことがありますか?頭がいい人と、そうでない人は何が違うのか?
この問に多くの人は「もとから頭がいいから」や「頭のできが違う」「生まれつきのもの」といった、先天的なものだと考える人も多いかと思います。
しかし著者が数多くの東大生を取材する中で気づいたのが、彼らはみな「当たり前のことを当たり前に積み重ねてきた結果」として東大生になったということです。
普通に頑張った普通の人が、結果として東大に合格したというもので、生まれながらの天才はほとんどいないといいます。
つまりは東大生の「頭のよさ」は後天的に得られたものだといいます。
日常の解像度が高い
ではいったい、どうすれば頭が良くなるのか?著者が考える最大のポイントは日常の解像度だといいます。
解像度とはカメラなどに使われるもので、要するに、鮮明に映し出せるか、細かい部分まで見ることができるかというものです。
頭のいい人はこの解像度が高く、高解像度で世の中を見ているといいます。身の回りすべてのことから学ぶことこができる、高性能のカメラを持っているというのです。
これにより同じ景色を見ていても、学べるものが違ってくると著者いいます。
例えば普段見かける信号機を例にとっても日常の解像度が高い人とそうでない人では違ってきます。
普通の人は信号が青に変われば道路を横断するだけですが、日常の解像度が高いと「青信号と言うけど、どう見ても緑色だよな?」と、ふとした疑問がひっかかります。
そこから「そういえば青汁も緑色しているのに青汁というな」とさらに思考が広がります。
実はこれには、 平安時代にまでさかのぼる理由があります。
平安時代には、 究極的には色は4種類しか存在していませんでした。
いえ、 存在はしていたのですが、 色を示す言葉が4種類しかなかったのです。
それは、「赤」と「青」と「白」と「黒」です。 この四つの色だけで他の色を表したのです。
緑色はこのとき青と区別されていませんでした。
茶色も黒の一種とされていて、「浅黒い」などと表現されていました。今でも「浅黒い」という言い回しは使いますよね。
黄色も赤の一種にカウントされていて、日本の色は4つだけだったわけです。
この名残として、今でも「赤い」「青い」とは言いますが「緑い」とは言いませんよね?
「白い」「黒い」とは言いますが「黄い」とは言いません。色が形容詞になるのは「赤」「青」「白」「黒」だけなのです。
他の色がどんどん増えてきたのは、鎌倉時代以降になってからです。 しかしそれ以降もこの4色が日本古来の考え方として残っていて、それ以外の色はこの4色に比べて優先順位が低いのです。 だから信号も青いと言うし、緑色の汁も「青汁」と呼ぶのです。 平安時代の名残が今でも残っているのが「碧」だというわけです
信号機のような日常的に目にするものでも、そこから学ぶことができる人とできない人がいて、学ぶことができる人はどんどん新しい知識を吸収していきます。
「日常の解像度が高い」というのは、まさにこういうことなのです。
理屈はわかったけど、実際は難しそう。そう考える人も多いかと思います。
しかし、日常の解像度は思考法を変えれば誰にでも上げられると著者は言います。
この本ではそのために必要な「5つの思考回路」が詳しく書かれています。
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